②弓と禅の一考察(尨犬の正体)

大正13年(1924)、オイゲン・ヘリゲル博士は、東北帝国大学の招きで来日します。
著書「弓と禅」は、日本で出会った弓術の大射道場教を創始した阿波研造師範の元で修業した6年間の記録です。

不肖櫻井、分かっているのかいないのかも分からないまま、ページを捲ります。

2 【弟子入り】 〜 3 【呼吸法】p32~49

さて、ヘリゲル博士は、同僚の小町谷操三氏の力を借りて、弟子入りを許されましたが、早速、壁にぶち当たります。

「弓の弦を引っ張るのに全身の力を働かせてはなりません。そうではなくて両手だけにその仕事をまかせ、他方腕と肩の筋肉はどこまでも力を抜いて、まるで関わりのないようにじっと見ているのだということを学ばなければなりません。」(「弓と禅」p40)

しかし、ヘリゲル博士は力任せに弓を引き、その状態を維持することもできませんでした。師範に言われていることを理論的に考えてしまい、守破離の守で躓いてしまいます。
ある日、師範は呼吸についてアドバイスをします。

「あなたにそれができないのは、呼吸を正しくしないからです。息を吸い込んでから腹壁が適度に張るように、息をゆるやかに圧し下げなさい。そこでしばらくの間息をぐっと止めるのです。それからできるだけゆっくりと一様に息を吐きなさい。そして少し休んだ後、急に一息でまた息を吸うのです。こうして呼気と吸気を続けて行ううちに、その律動は、次第に独りでに決まってきます。これを正しく行っていくと、あなたは弓射が日一日と楽になるのを感じるでしょう。」(「弓と禅」p42-43)

力を抜こうとした瞬間、抜こうとした部位を意識してしまい大変苦労しましたが、呼吸法の訓練を始めると、少しずつ無心の感覚をつかんでいきます。
博士は、理屈や力で弓を引くのではなく、精神的に(心で)弓を引くということを、体で理解することができたのです。

「呼吸」が、尨犬の正体(奇怪な物事の正体)だったのです。


これまで、複数のコラムで、無心の作り方や呼吸についてまとめてきました。
日ごろ無意識に行っている呼吸は、心と体に大きな影響を与えます。
具体的な呼吸方法についてはさっぱり分かりませんが、今後調べたり、実践する機会を持ちたいと思っています。追記します





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